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與天無極:天と與 (とも)に極まり無し(番外編)
2023-01-16
  ご利用者が書道の作品に「與(=与)天無極」と書かれていました。初めてみる言葉で調べたところ、日本人による初めての外洋防波堤である「小樽港北防波堤」上に設置された石碑に書かれていることが分かりました。「天と與 (とも)に極まり無し」と読み、「自然が万物を生かし育てる無限の力によって、永遠に生き生き発展するように、人間もこの天意を覚り、英知を結集することにより永遠の発展を続ける」という意味。ひいては「天のとこしえなるが如く、この防波堤は永久なり」という意味が込められているそうです。(小樽港湾事務所みなとの資料コーナーより)「技術者が千年に亘って問われ続ける誉れと辱めとは、設計の立て方にある」という技術者精神のもと、現小樽港湾事務所の初代所長である廣井勇(ひろいいさみ)博士が設計し、皆で力を合わし造られた日本初のコンクリート製防波堤は、完成から100年以上たった今でも、日本海の荒波から小樽港を守っています。この偉業が横浜国立大学の研修会で留学生が見学する様子の記事(国土交通省北海道開発局ホームページより)に記されており、心動かされました。先人の誇り高い仕事のお蔭で私たちは守られていると感じました。廣井博士は高知県のご出身で、高潔無私を貫いた生き方も尊敬され、「廣井山脈」と呼ばれるほど数多くの優れた人材を育成しました。台湾の烏山頭(うさんとう)ダム建設にあたった八田與一(はったよいち)、パナマ運河構築に参画した青山士(あきら)等も門弟です。(廣井勇を顕彰する会ホームページより一部抜粋)廣井博士も野中 兼山(のなか けんざん)の偉業を聞いて育ったということも注目すべき点で、尊敬の念は連鎖し、よりよい未来を創ると思いました。

 「與天無極」 と書かれたご利用者のお蔭で、高知県出身の偉人について知ることができました。ありがとうございました。(し)

追記:烏山頭ダムは建築当時は「うざんとう」と濁音で呼ばれていました。しかし、現在は「うさんとう」と表記されることもあるようです。台湾の繁体字表記は、烏山頭水庫 (ウーシャントウ シュイクー)、英文は、Wushantou Damです。
 八田與一技師の素晴らしいところは最先端の技術を取り入れ、水の恩恵の有無で台湾の住民同士の対立や分断を生まないように努めたことだと思います。雨季は洪水で暴れ川、乾季は川底が干上がり、塩害もひどく、不毛の地と嘉南平原は呼ばれていました。廣井教授の「橋はそれを利用する者のためにある」という、利用者第一の考えが八田技師にもありました。そして、工事に当たった作業員に対しても、家族の帯同もできるよう、宿舎、病院、学校も造りました。
 八田技師の採った粘土・砂・礫(レキ・砕いた石)を使用したセミ・ハイドロリックフィル工法(コンクリートをほとんど使用しない)という手法によりダム内に土砂が溜まりにくくなっており、近年これと同時期に作られたダムが機能不全に陥っていく中で、しっかりと稼動しているそうです。調査、設計、工事と一貫して長期間携わり、全体を見ることのできる人物でした。東京電力の吉越洋さん(東京電力株式会社顧問、日本大ダム会議会長)は次のようにインタビューで言われています。「学ぶべきことは、技術者として課題解決にあたってすごく勉強したこと。それと是が非でも完成させるという強い意志を持つこと。当時としてはすさまじい大工事をよく続けたものだと思います。日本が台湾を統治していて、内地と同じレベルにしようとして懸命であったからこそ、出来たという感じもあります。
 何としても先進国に負けない立派な事業を完成させる、そのためにはどんな難関にも怯むことなく努力を惜しまない・・・。ひたすら頭が下がるのみです。」
 日本人の偉業ばかりを書いてきましたが、「日本近代水道の父」と呼ばれる W.K.バルトン(または、バートン)英国技師の貢献も大きいです。1896年に台湾の基隆・台北の上下水道計画を作成しました。バルトン技師はスコットランドにいた頃から、医学と工学の結びつきを重視した計画・設計・施工等で実績を上げた数少ない衛生工学の権威の一人でした。しかし、当時の台湾は瘴癘(しょうれい:気候・風土のために起る伝染性の熱病。風土病)の地と言われ、1899年に台湾でマラリアに罹り、東京で43歳の若さでお亡くなりになってしまいました。とても残念です。台湾で働くということは、風土病だけでなく、「土匪(どひ)」と呼ばれる武装集団等もいて、本当に命がけだったのです。しかし、日本が台湾に多くの優秀で高邁(こうまい)な精神の人材を送ったことで、その精神に共感する人々が集結する地にもなったのだと思います。バルトン技師は、東京帝国大学でも特別講師として教鞭をとられていたので、教え子の技師らの養成にも貢献されました。技師や研究者の国籍を超えて貢献する姿勢に心が打たれます。

バルトン(または、バートン)先生の教科書より 
――問題とすべきなのは、「給水をいかに安く手にすることができるか?」ではなく、「私たちが負担できる額の範囲で得られる最高の給水とは?」である。これは、公衆衛生を最良の状態に保てるよう、家庭に安全な水を十分に供給するという条件のもとでのことである。(JICA フィールド・レポートNo.7 2021年9月

 そして、安全な水道水の管理は、健康に直結します。上下水道(給水、排水、下水処理)、都市計画を一体で見て、公的管理することが重要だと、いろいろな文献をインターネットで見て思いました。民間に任せて、安全性が不透明になり、結局は高額となった事例もあります。最近は何かと専門性を問われ、全体を見ることができる人がいろんな分野において、減ってきたように思います。衛生工学のバルトン先生、医師であり、政治家である後藤新平 台湾総督府民政長官のような多岐にわたり見識のあった方々の存在が台湾の発展に大きく寄与したのではないでしょうか。私自身も「木を見て森を見ず」というところがあり、反省します。政治家だけでなく、国民一人ひとりが自分たちの職域や地域のことだけでなく、大きく日本を捉え、その未来に心を馳すことが大事だと思います。(し)


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